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枯れかけた木

その原因はもっと大きい

希望に満ちた開塾のための準備やスタートから一転、このように、初めて来て頂いた親子の姿から、これから乗り越えていくべき大きな課題を、真正面から突き付けられる形になりました。

 

このコラムを読み始めて頂いた方にも思い当るところが十分にあるのではないでしょうか?自分が学生だった頃を思い出してみて下さい。うなだれている彼の気持ちが痛いほど理解できるのではないでしょうか?

 

「なんで勉強しなきゃいけないのか?」「勉強しろと言われるとやりたくなくなる」

彼の抱える苦しみは、誰もが感じてきた葛藤であるはずです。

 

また親の立場でいらっしゃる方には、この前のめりになるお母さまの気持ちも痛いほどわかるのではないでしょうか?「うちの子にはこうなってほしい」「もっとできるはずだ」「ほかの子はもっとできている」わが子への愛情がいつの間にか、お互いを苦しめあう日常に変わってしまっている。

 

目の前のこの2人の姿を変えていくこと、これが大きな目安となりました。私の教育観の大きな指針となったのです。この対照的な2人の姿が、今の教育の在り方に見えたのです。変えるというとオーバーかもしれませんが、助けたい、救いたいという思いになりました。

 

「お母さん、任せてください、きっと勉強させます、成績を上げさせます」

「お願いします、何とかしてください、このままでは、ろくな大人になりません」

 

こう言ってありきたりの、いわゆる塾らしい会話で終わらせれば、きっとその場はうまく収まるかも知れません。しかし今の状態で、彼に無理にやらせたり、計画を立てたり、叱咤激励したところで、本当に彼は変わるのでしょうか?

 

そもそも彼はここに来るまでに、別の塾に通っていた。宿題をしていなければ、夜の10時まで居残りをさせられていた。時間内に暗記できなければ、紙が真っ黒になるまで書き続けさせられた。彼の心はすり減っていました。

 

目の前に大きな川が流れているとします。川の周りには木々が緑色に生い茂っています。しかし向こう岸の1本の木だけが、茶色く変色し、いかにも枯れかけている木だったとします。この枯れかけている木をあなたならどのように直すでしょうか?

 

腐ってきている幹を削って、見た目を整えますか?変色している葉っぱに薬を塗って、よみがえらせますか?折れかけている枝に、接ぎ木を添えて、まっすぐに矯正しますか?

 

彼がその茶色く変色し、枯れかけている一本の木だったとしたら。うなだれている彼にはっぱをかけて、無理やりにでも体を起こしますか?すり減っている彼の心に薬を与えて、よみがえらせますか?うつむいた彼に叱咤激励して、笑顔を取り戻させますか?

 

それは周りから見える表面だけを取り繕っているにすぎません。一時的に直したかのように見えたとしても、葉の生い茂るような木に復活するはずがありません。

 

地面の下には、木の高さ以上の根が生えています。木の根には水や養分を吸い取る役割があります。目に見えない部分が根腐れしているのかもしれません。木のまわりの土が腐っているのかもしれません。もしくは大きな川からしみこむ水が汚れているのかもしれません。

 

彼には水や養分を吸いこむ意欲がなくなっているのではないでしょうか。勉強という言葉に心が折れかけているのではないでしょうか。味方であるはずのお母さんが、味方に見えなくなっているのではないでしょうか。安心の家庭の場に、安らぎがなくなっているのではないでしょうか。

 

私たちは、ふつう悪く見えるところがあれば、その悪く見える部分だけに目が行きがちです。この場合であれば、枯れかけている木ばかりに目が行ってしまうものです。

 

しかしもっと大きな視野で、なんでこの木が枯れかけているのか?見えない根の部分なのか、周りの土の部分なのか、もっと広い視野に広げるとしたら川の水なのか、周りの環境に目を向けなければ、理由や原因は見つからないまま、本当の解決にはならないはずです。

 

面談の初日、私から目線をそらしたまま、帰って行った彼のうしろ姿に、誓いました。大丈夫、きっと笑顔を取り戻して見せる。そう誓いました。

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